「そもそもマンション管理会社って何してるの?」の記事で管理会社の業務について全体像の解説をしましたが、今回はハード面の業務についてより詳しく例をご紹介します。
※最終的にどのような契約内容で管理業務委託を行うかは、マンションごとの設備の有無や管理組合の意向などにより異なります。
【清掃業務】
■日常清掃
清掃員により日々の敷地内のゴミ拾い、建物内の掃き拭き清掃、ゴミ出し(ゴミ清掃車への渡し)などを行います。あくまでも日常的な簡易の清掃です。
■定期清掃
数ヶ月に一度の頻度で、床面の機械(ポリッシャーなど)による洗浄や、ワックス仕上げなど大がかりな清掃を行います。日常清掃で落ちなかった汚れについて、この定期清掃時に清掃を試みることもよくあります。タワーマンションであれば、ゴンドラ(箱形の乗り物)やブランコ(板)に乗って窓ガラスやガラス製バルコニー腰壁の外側をこの定期清掃で清掃することがあります。
【建物・設備管理業務】
■建物・外観目視点検
頻度は毎月~数ヶ月に一度。必ずしも必要なものではないので、管理組合や管理会社によって頻度にはかなりバラつきがあります。ドアなどの動作に異常はないか、コンクリート部分にひび割れや剥落がないか・漏水がないか・表面の劣化がないか、外壁タイルについて見るからにわかる浮きや剥落・欠け等がないか、金属部分の錆がないか、といった事項について総合的に目視点検を行います。ただし、一般の人から見ると詳細な調査を行っているように感じるかもしれませんが、あくまでも目視の点検に過ぎないため、劣化状況について必ずしも正確に把握できているとは限らず、各種工事検討の際には詳細調査が必要になります。
■エレベーター点検
頻度は月に1~2回程度。エレベーターの保守管理は部品など専門性が非常に高く安全性の高さも極めて問われる設備であるため、通常は管理会社が専門の保守業者に再委託します。なお、点検時に保守契約費用の中で部品交換を行ってくれる契約と、保守契約費用が割安な代わりに部品交換の際には都度別途費用が必要となる契約に分かれます。年1回の法定点検義務もあります。
■給水設備点検
頻度は3~4ヶ月に一度程度。数十戸程度までであれば水道管からの水を増圧ポンプで送水する仕組み、それより大規模なマンションではいったん受水槽に水をためつつ加圧ポンプで送水する仕組み、めったに見なくなりましたが古いマンションでは屋上の水槽にポンプで送水して重力で給水する仕組みなどがありますが、それぞれの方式で使用しているポンプや水槽を点検します。水槽が一定以上の大きさだと法定点検と清掃の義務があります。
■排水設備清掃
頻度は数ヶ月に一度。共用部の下水管や桝を清掃しつつ、専有部内の流し・浴室・洗面所の排水管について高圧洗浄などで清掃し、詰まりを防ぎます。マンションにお住まいの方であれば経験があるのではないでしょうか。
■消防設備点検
一般的には半年に一度の頻度。消火器・消火栓やスプリンクラーなどの「消火設備」、火災報知設備や非常サイレンなどの「警報設備」、避難はしご(バルコニーに設置されている部屋があります)や誘導灯などの「避難設備」、といった消防上必要になる設備を点検します。
■機械式駐車場設備点検
頻度は1~3ヶ月に1度。制御装置やチェーン・ワイヤロープ、スプロケット(歯車)などの点検を行います。法律上の義務はありませんが、故障により人命に関わる大事故が発生したり、自動車が出せなくなって仕事や生活に支障が出たりする可能性があるため、実質的に必須と言える点検です。
■宅配ロッカー設備点検
頻度は1年に1回程度。システムの点検や荷物チェック、ロール紙やインクなど消耗品補充などを行います。
■建築設備定期点検
頻度は1年に1回、法律で義務づけられています。排煙設備や非常用の照明設備、給排水設備などの点検を行います。
■遠隔設備監視
各種設備のセンサーや各住戸からの非常通報で非常信号を感知すると、警備員が現地に急行します。簡易的な対応であれば追加費用なしで対応してもらえます。
【おわりに】
上記で紹介した項目以外にも、管理会社や契約内容によって自動ドアの点検や植栽管理などの業務を管理会社への委託として実施している場合があります。
また、厳密には管理会社が直接自社でここに挙げた業務内容を行っているのではなく、専門業者への再委託を行い、管理会社はとりまとめるワンストップサービスとして機能しているのが基本です。
多くの場合において、新築分譲当初の内容の契約では多くの業務が管理会社への委託となっており、管理組合からこれらの業務を直接発注する契約関係になっているものはほとんどありません。
もちろん管理組合から直接発注することで安く済ませられる可能性もあるのですが、手間を省いてくれた上で報告を踏まえた対応を提案してくれ、責任の所在がシンプルになるのも管理会社に委託するメリットです。