大規模修繕工事の内容(前編)

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2023.6.20

以前の記事で長期修繕計画と大規模修繕工事の大まかな内容を解説しましたが、大規模修繕工事とはより具体的にはどのような内容なのでしょうか。

国土交通省が作成している長期修繕計画作成ガイドラインで、大規模修繕工事として想定されている項目(12~15年目ごろの実施想定)に沿って説明していきます。

【仮設工事】

「仮設」という言葉はトイレやプレハブを一時的に建てること・・・という印象が一般的かもしれませんが、工事用語でいう「仮設工事」はもう少し広い意味での作業を指します。

■共通仮設 

本体の工事に必要な事務所を作ったり、資材置き場を設けたりする工事です。事務所はプレハブとは限らず、近隣事務所の賃借やマンションの集会室を使うこともあります。マンションの規模が小さくてもある程度の規模必要な項目であるため、小規模マンションでは共通仮設の分やや割高になりがちです。

■直接仮設 

大規模修繕工事の基本的なイメージである足場を設置したり、各動線上に養生シートを貼ったりする工事です。タワーマンションなど高層のマンションや敷地が狭いために足場が組めない場合や、居住者への影響を抑えるために、足場ではなく「ゴンドラ」といわれる吊り下げた箱状の足場に乗って作業するケースなどもあります。安全確保のためのガードマンの人件費も一般にここに含まれます。

【屋根防水】

条件にもよりますが、屋根防水は基本的に大規模修繕工事の核である外壁工事と必ずしも同時に実施しなければいけないというものではありません。

しかし、一般的な工法では防水機能をきちんと維持できる目安がいずれにしても10年強といったところであるため、大規模修繕工事のタイミングで同時に行うことがほとんどです。

■屋上防水 

屋上のコンクリートの防水処理を補修する工事です。コンクリートは固いので水を通さないと思っている人も多いのですが、コンクリートだけでは水を通してしまうため表面に防水処理が必要になります(コンクリートの地面に水を撒いても、ある程度は染み込んでいきますよね)。普通のマンションは屋上には管理をする人しか入らないため、多くは躯体のコンクリートの上に(工法はいくつかありますが)防水層を設けるだけの「露出」工法をとっています。一方で眺望や憩いの場所のために日頃から住民が屋上に出入りすることを想定していると、躯体のコンクリートと防水層の上にさらにコンクリートを敷いて多くの人が歩いても防水層が破れないようにする「保護」工法をとります。屋上のこれらのタイプの差によって、必要な工事内容が変わってきますが、いずれにしても12~15年程度で補修が必要とされています。

■傾斜屋根 

都市部を中心にほとんどのマンションは屋根が平坦な形状をしていますが、リゾートマンションなど少し変わったデザインをするマンションでは屋根を傾斜させた形状にしていることがあります。屋上が平坦であれば工事等もやりやすいのですが、傾斜している屋根だと工事手法・金額などが変わってきます。

■庇・笠木等 

庇(ひさし)は出入り口や窓の上部に雨よけなどの目的で設置されている屋根のような部分、笠木(かさぎ)とはバルコニーや屋上の端で立ち上がっている部分の上部仕上げのことですが、修繕工事の項目上としては立ち上がっている部分全体を含めています。

【床防水】

バルコニーの床や、共用廊下・階段等の床の防水工事です。

日常的に歩行できる範囲での工事であるため、技術面で見るとこちらも必ずしも大規模修繕工事でなくてもというところではありますが、現実的には各居住者のバルコニーに立ち入って作業する工事は大規模修繕工事以外ではかなり調整が難しくなります。

足場を使わないで別のタイミングで実施する場合は、バルコニーの住戸間隔て板を外して作業をすることになりますが、工事期間中住民間も簡単に他人のバルコニーへ行き来できる状態になってしまいますので、セキュリティ・プライバシー上の問題が出てきます。

それに比べると、共用廊下・階段等の床については単独で実施してもセキュリティ等の問題は起きないこと、万が一漏水しても住戸内に比べて被害が少ないことから、工事の推奨時期としては重なるものの、少しでも予算を削りたい場合などには大規模修繕工事の項目から削除を検討してもよいかもしれません。

ただし、軽度でも漏水がある状況を放置すると躯体内部の鉄筋のサビなどにつながる可能性もあるため、実際には劣化状況などを見ながら設計事務所や施工業者と相談してください。

(後半へ続く)


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